神戸経済ニュース

こちらは旧サイトです。新サイトは http://news.kobekeizai.jp をご覧ください。

神戸とはどのような街か

 神戸で豊かに暮らすには、まず「安心して働ける経済がある」ということが重要なのだと思う。雇用や資本、消費や投資でお金が回転してこそ、というわけだ。ところで神戸の経済にはどのような特徴があるのだろうか。今後、どうなっていくのだろうか。

 日銀の政策委員(正副総裁と審議委員)は各地を巡回し、地方の名士と経済金融懇談会を開く。神戸では7月31日に木内登英審議委員が来神したのが最近だ。木内氏は兵庫県経済について、このように指摘する。

 兵庫県経済の印象についてですが、当地は鉄鋼・造船等の重厚長大型産業を中心に発展してきた訳ですが、開港以来培われてきた、時代の変化を先取りする進取の気質が浸透している下で、近年は、「神戸医療産業都市」の整備や、スーパーコンピュータ「京(けい)」の開発・運用拠点となるなど、わが国経済の成長を牽引する先進的産業の集積も進んでいるとの印象を持ちました。また、消費・観光面では、大型クルーズ船の寄港に適した神戸港を有していることなども強みだと思います。これらの特徴は、経済面での当地の高いポテンシャルを示していると思います。

「木内審議委員記者会見(7月31日)要旨」

記者会見 2014年 :日本銀行 Bank of Japan

 ここでの木内氏は、神戸は震災後に先進的産業の集積に取り組み、それが「進んでいる」と指摘している。神戸の製造業は神戸開港の経緯もあって三菱重工神戸造船所や川崎重工業といった重厚長大産業のウエートが今でも実際に高い。例の小保方騒動で神戸の医療産業は国際的に存在感を持ちつつあるのを実感したとはいえ、まだ「進んでいる段階」だし、観光資源も含めてまだ「ポテンシャル」にとどまるというのが「医療産業都市」「スーパーコンピューター『京』」について専門家の見方であることが分かる。

 では、実際に神戸のGDPを生産サイドからみるとどうなるのだろうか。兵庫県が発表している「市町民経済計算」(兵庫県/市町民経済計算)によると、神戸市のGDPに占める製造業の割合が17%程度である一方、サービス業の割合は29%もある。これ以上のブレークダウンはないのでドタ勘になるけれど、製造業にはケミカルシューズもモロゾフの洋菓子も入っているだろうから、重工業のウエートはかなり下がっているのだろうなという印象だ。

 日本で最も存在感のある製造業といえば自動車なのだが、神戸には自動車がないと言っても良いほど存在感は乏しい。重厚長大産業は金額ベースでは縮小したけれど、たとえば新幹線や潜水艦のような、比較的付加価値が高いとされる自動車よりも、さらに高付加価値製品にシフトしてきたということだろう。時代の流れを反映しているのだろう。

 一方でサービス業も医療産業やスーパーコンピューターの時間貸しなど、きわめて高付加価値の方向に舵を切っていることが明白だ。教育水準も人件費も高く、思想信条の自由があって研究開発に適した日本の地の利を生かすとすれば、戦略としては間違っていないように思う。たしかに「ポテンシャル」という木内氏の表現は(地元の贔屓を割り引いても)的を射ているように思える。

 そこでやはり残念だと思うのは、神戸空港が国内空港にとどまっているということだ。医療産業は国際的に存在感を持ち始めているのだとすれば、海外から直接神戸に到着し、30分後には研究室にいるという環境はとても魅力的であるように思える。ネスレやP&Gといったグローバル企業が日本における本拠地を神戸に置いてきたのは、神戸に港があったからだろう。関空に到着して船に乗って、または車で1時間かけて神戸に入るのは、ちょっと惜しいと思うのだけれどどうだろうか。

 

 

 

 

 

 

copyright(c)2014 by Kobe Keizai News, all rights reserved