神戸経済ニュース

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洋菓子のフーケが自己破産へ 中堅洋菓子メーカーに多店舗展開の壁

 東京商工リサーチ大型倒産速報によると、洋菓子のフーケ(神戸市中央区)が自己破産へ向けて準備を進めていることが明らかになった。10月31日に事業を停止し、既に弁護士に手続きを一任したという。負債総額は約6億円。11月4日付で報じた。

 

 フーケは1970年創業。創業者の上野庄一郎社長は兵庫県洋菓子協会の副会長を務めた老舗だ。上野氏は県の労働・技能功労者表彰も受けた。神戸では名の知れた洋菓子店といえる。神戸新聞電子版によると、同業であるエーデルワイスの比屋根毅会長が「オーバーストア」と過当競争を指摘。加えて「小麦やバターの価格高騰などで、状況はどこも厳しい」と原材料高にも言及した。

 実際、洋菓子業界の経営には苦しさがにじみ出る。神戸洋菓子メーカー「御三家」の一角を占め、なかでも唯一の上場企業であるモロゾフの2015年1月期は単独税引き利益が2億8000万円の見通しと、前期に比べ40%減少する見込みだ。会計期では上期に相当する14年2〜7月期の売上高は132億円だったが、同社が当初見込んだ134億円にわずかながら届かなかった。通期の売上高は前期並みを見込む。やはり競争激化で売上高が伸び悩む中、原材料高によるコスト増が利益を圧迫する構図だ。

 

 今回、自己破産を進めているフーケは、一時20店舗に事業拡張しながら商品のニーズを捉えきれず、事業を縮小。一流の洋菓子職人が経営者でありながら、自己破産への道をたどった。似たケースとして思い出されるのは2007年に自己破産を申請した「スイス菓子ハイジ」だ。同社も一時は東京に出店するなど多店舗展開が仇になった経緯がある。シェフパティシエはテレビ番組でも日本一の腕前を競った。当時のシェフパティシエが三田市で経営する洋菓子店は、いま人気店として名高い。フーケもハイジも、職人の腕に異論はないだろう。

 現在、神戸洋菓子メーカーの「新御三家」と呼ばれるのはケーニヒス・クローネ、アンテノールアンリ・シャルパンティエの3ブランドだ。この3ブランドに共通するのは、東京進出への積極進出によって大きく飛躍したとみられること。東京進出に際しては、それなりに商品構成の変更も迫られたようだ。東京など遠隔地への出店や多店舗展開には、工場新設などの設備投資や生産体制の見直しがどうしても必要になる。結果として提供できなくなる従来の看板商品も出てくるかもしれない。

 

 日本政策投資銀行のリポート「洋菓子でつくるクール神戸」によると、神戸市は世帯当たりの洋菓子消費額が2万2218円と全国で最も高く、これが神戸での洋菓子産業の集積を支えてきたと分析している。加えて洋菓子が観光資源になり得るということは、神戸エリア外の消費者による神戸での洋菓子購買も起きている。つまり神戸の洋菓子メーカーは神戸エリア外の出店する際に、神戸よりも財布の紐が堅い消費者をどのように取り込むかが鍵になる。神戸の洋菓子メーカーが全国展開なども含む多店舗展開に踏み切る場合は、事業環境の違いという職人の腕前とはまた異なる、案外高い壁を乗り越える必要があるようだ。

 

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