神戸経済ニュース

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(解説)円の急上昇は企業収益に影響か 今期予想の「前提」上回る円高に

 外国為替市場で円相場の急上昇は、神戸市内に本社を置く企業の収益にも影響する可能性が出てきた。日本時間24日昼に円相場は1ドル=99円ちょうど近辺と2年7カ月ぶりの円高・ドル安水準を付けた。その後、ニューヨーク市場での取引時間帯に102円台前半に押し戻されて取引を終えたが、多くの企業が今期の業績予想を作成するうえで想定する為替レートよりも円高・ドル安の水準だ。

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  円相場の急上昇は、23日に投開票した英国民投票で英国が欧州連合(EU)を離脱する主張が多数派になり、英国や欧州は中長期的に経済の存在感が低下するとの見方が広がったのがきっかけだ。英国のEU離脱交渉が始まるのはキャメロン英首相の辞任後とみられるうえ、交渉開始からも時間がかかるとの見方が多い。ただ、それまでに外国為替相場の動向によって、今回の英国民投票が日本の経済活動に影響するとみられる。

 24日の外国為替市場ではユーロや英ポンドがほぼ全面安。欧州通貨に対する円買いが、対ドルにも波及した。結果が判明した時点では欧米の取引時間帯ではなかったため、主要市場としては唯一開いていた東京市場に売買が集中した面もあるようだ。円相場の急上昇を嫌気する形で、日経平均株価が1286円下落するなど東京株式相場も記録的な大幅安になった。

 国内企業は円高が進むと、海外の資産や売上高を円換算した際に金額が目減りする。このため輸出が多い大企業を中心に、収益の悪化につながるケースがある。神戸商工会議所の大橋忠晴会頭(川崎重工業相談役)は5月9日の定例記者会見で、望ましい為替水準は1ドル=105円以上100円未満との認識を示したという。足元では、この水準を上回る円高が進んでいる。

 副会頭として大橋氏の記者会見に同席したシスメックスの家次恒・会長兼社長は、報道によると「円高だけを理由にすると経営がおかしくなる」と述べ、円高を乗り越える手腕こそ経営者の責任であることを強調。ただ、急速な円高によって企業の対応が追いつかず、短期的な収益悪化につながる可能性は残る。

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 もっとも、昨年末には1ドル=120円台半ばだった円相場は今年に入って上昇。23日の英投開票前にも1ドル=105円を割り込む円高・ドル安が進んでいた。すでに12月を決算期末とする企業を中心に業績予想を見直す動きが出ている。

 アシックスは17日、2016年12月期の業績予想を下方修正した。業績予想の前提になる為替レートを1ドル=110円、1ユーロ=123円と従来予想の120円、130円から円高方向に見直したことも影響したという。住友ゴムは今期の業績予想こそ据え置いたが、業績予想の前提を1ドル=115円、1ユーロ=126円と従来予想の121円、134円から変更した。現在の相場水準が定着するようだと、さらなる見直しを迫られる可能性もある。

 

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