神戸経済ニュース

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(解説)神戸空港10年、改めて大阪2空港との関係整理を 運用制限は「地元の合意」

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 2月16日に神戸空港の開港から10周年が経過し、さらに1カ月が過ぎた。そろそろ一巡した関連報道などを見聞きして感じられたのは、「なぜ神戸空港の“運用制限”は解除されないのか」ということだ。さらに、伊丹空港関西国際空港関空)との3空港一体運営を目指した神戸空港の運営権売却は、はたして運用制限の撤廃につながるのかという点に疑問も残る。10周年を迎えた神戸空港に必要なことは実績を踏まえた上で、改めて伊丹や関空との関係を整理して考えることではないか。

 

運営権売却は打開策になるのか

 「運用時間は午前7時から午後10時」「国際便は飛ばさない」「1日30便まで」。こうした神戸空港の運用制限があるために、本来は24時間運営できる海上空港の強みを発揮できない。空港経営が本格的に黒字化できないのはそのためだ−−といった見方が定着している。兵庫県井戸敏三知事は記者会見などで、こうした運用制限がたとえ部分的にでも解禁されるよう「国に働きかけていく」と繰り返し発言している。

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神戸空港に駐機中のスカイマーク機)

 神戸空港を設置・運営する神戸市は、神戸空港の運営権売却を通じ、関西3空港が一体運営されることになれば、国も神戸空港の運用制限を解除せざるを得ないだろう、と踏んでいるようだ。神戸市の久元喜造市長は18日の市議会本会議で「(運営権の)売却の実施方針公表から運営開始まで1年半から2年程度か かった他空港の事例を念頭に置いている」と述べ、運営権売却は早ければ2018年春ごろになる見通しを示した。

 神戸市が運営権を売却する際の売却先は伊丹、関空の運営会社である関西エアポート(大阪市西区)でなければ3空港の一体運営にならない。だが関西エアポートにしてみれば運用制限が解除される見通しがなければ、そもそも入札への参加を考えないのではないか。神戸市は2016年度に2億円の予算をつけて運営権売却に向けた調査を開始すると表明したが、運用制限の緩和や撤廃に見通しが立たない中では買い手が付かず、運営権売却も結局頓挫することになりかねない。

 

運用制限は「地元の合意」

 2月14日付の神戸新聞神戸空港10周年に関連して、国土交通省の藤原威一郎参事官へのインタービューを掲載していた。藤原氏は、神戸空港の運用制限について「それを変えるには地元で新たな合意を取り直すことが必要」と述べたという。運用制限は関空の経営を安定させることを目的とした、関西各府県の合意に基づいており、必ずしも国の方針でないことを改めて強調した形だ。国がそうした姿勢を見せる中で大阪府松井一郎知事が神戸空港について「もともと必要だったのかという疑問符がつく」(2月12日付の神戸新聞)と発言したとすれば、まず神戸空港に必要なのは国への働きかけでなく、大阪を説得することではないのか。

 関空の発着回数に依然として余裕がある中で、単純に神戸空港の便数増や国際線の離発着を認めることになると、関空や伊丹の需要を奪われると考えるのも無理はない。関西エアポートにしても、神戸空港の黒字を拡大させて関空や伊丹の赤字を穴埋めする構図を求めるとは考えにくいし、それでは大阪府も納得しないだろう。神戸市は神戸空港の運営権を関西エアポートに「買ってくれ」というのなら「地元の合意形成」について、特に大阪2空港と神戸空港の関係について改めて説明を求められる。

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神戸空港10周年のシンボルマークをデザインした花時計=神戸市中央区

 一方で、神戸空港が利用者に選ばれる空港であることも必要だ。大阪よりも神戸を訪れたいという需要が高まれば、航空会社や旅行会社といった需要側が大阪府や国を動かす原動力になる可能性もある。幸いにして現時点では運用規制のあるなかで年に20万人超が神戸空港を利用。自治体が運営する空港としては国内最大だ。たとえば神戸医療産業都市に本社を置く企業や研究所が一段と国際化すれば、国際線の設定を求める声が利用客から高まるかもしれない。そうした神戸の街自体の魅力を高めることが、相乗的に神戸空港の経営にも寄与することは言うまでもない。(神戸経済ニュース)

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