神戸経済ニュース

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(寄稿)[神戸鳥瞰虫探し]10月の空に仰ぐのは物価か嘆きか

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 気候の変動ぶりが激しい。9月の日照率は近畿で68%、降雨量は平年比172%(大阪管区気象台)だった。神戸に限れば日照率は30%だった。農作物にとっては悪天候。野菜の収量に影響が出始める。生産者にとっても、消費者にとっても良いことではない。

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 天候の変動が市場価格へ短期に反映されるのが野菜。9月の天候は、野菜栽培にとっては戦後最悪の環境だった。収穫減少が見込まれるので、価格が高騰してもおかしくはない。家計にとっては負担増になり、物価上昇を願う人たちにとっては朗報になる。

 ただ、最終消費者である神戸市民にとっては選択肢が残されている。①野菜を買わない②代替品を選ぶ--方法だ。意識しているか否かは別にして、神戸市民は野菜を買わなくなってきている。神戸中央卸売市場での野菜取引量は伸びが鈍っている。自分で買うよりは中・外食で摂食する比率も高まっていると推定される。野菜の小売価格が上昇すれば、買わない選択をする可能性が加速される。

 野菜を購入するにしても、海外産品を含む遠隔地産品や、他の生鮮品へ代替するできる余地も高まっている。野菜は価格がこまめに変動する消費財の一つだが、過去10年余りの卸売価格(神戸中央卸売市場でも野菜全平均)を見ると、安定した幅で推移してきた。キャベツ、白菜、大根3品の平均キログラム小売単価も、季節要因も含めれば家計を圧迫するような変動に見舞われてこなかった。同じ3品への家計支出実額は昨年秋以降、減少を続けている。

 この経験から判断すれば、10月の野菜価格が上昇したとしても、家計運営に支障を来たす事態にまでは至らないかもしれない。天候要因による高騰があったとしても、購入側が供給側には妥協しないので家計への打撃は小さいだろう。あるいは消費者の関心が向かう代替品「生鮮食品除く食品」の物価が上昇すれば、「生鮮食品除く総合」の消費者物価指数で自ら政策を評価する日銀だけは喜ぶかもしれない。(候鳥)

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