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神戸経済ニュース

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(解説)G7保健相会合、「世界に発信」できたか 問われた厚労省の問題意識

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 11〜12日に神戸ポートピアホテル神戸市中央区)を会場に開催した7カ国(G7)保健相会合では、成果文書として「神戸宣言」がまとめられたという。感染症対策や薬剤耐性菌、高齢化・認知症への対策と世界の保健に横たわる課題を改めて確認した形で、特に大きな対立点もなく会合を終えたとみられる。開催都市である神戸市も、医療産業の集積地として会合の円滑な運営に寄与したと評価できそう。ただ本当に神戸の魅力を世界に発信できたか、という点では疑問も残る。

 

■神戸医療産業都市の売り込み、一定の成果か

 今回のG7会合では、会合が終了して神戸宣言を発表した記者会見の後も公式日程が続いた。記者会見後の昼食会では、久元喜造神戸市長が参加者に直接、神戸医療産業都市についてプレゼンする機会を得たという。その直後に理化学研究所の多細胞システム形成研究センター(CDB)やスーパーコンピューターの「京」と、神戸医療産業都市の主要施設を視察するという日程を、公式日程に盛り込めたのは神戸市を中心とした推進協議会が早い段階から周到に準備した成果といえる。

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 加えて、市民の間の歓迎ムードも一定程度、醸成されていたのではないか。神戸市では2008年に開いた8カ国(G8)環境相会合以来の大規模な国際会議とあって、これを機会に官民とも現在の国民の保健や福祉のあり方を問い直す行事を企画。推進協議会が200日前、100日前、50日前などと段階的なイベントの開催で市民参加への意識を高めたほか、8月21日の「ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット」(WHOこうべセンター主催)では高校生らの関心の高さも浮き彫りにした。

 こうした地元の事前行事や広報活動が活発だったこともあり、警備やその一環である交通規制などに対する不満も小さかったようだ。さらに交通規制に関しては神戸大橋神戸港港島トンネルの車線規制が中心で、都心地域である三宮周辺はほぼ通常通りの通行できた。警備しやすい人工島での国際会合という、サミット誘致時からの神戸のメリットを、約束通り発揮した。

 

厚労省には「やる気」なし?

 では、会合自体の運営はどうだったのだろうか。この点には厚労省の姿勢に疑問が残る。日本でG7会合を開催するからには、会合を実りあるものにして、世界への影響力を発揮し、世界の人々の健康に寄与するのが議長国としての責務だろう。そのためには、地元の力を借りることを含め、さまざまな方法で今回の成果を広める必要がある。その努力は十分だっただろうか。

 特に情報発信の面では問題があったと指摘せざるを得ない。厚労省は5月26日に今回の会合に向けたホームページを設置した。しかし厚労省はこれを設置して以来、会合が終了した現在に至るまで更新した形跡がない。こうした場所は通常、会合に向けた準備をどういった経緯で進めたかや、事前イベントの告知、会合を取材する記者らの登録に活用するケースが多いが、厚労省はそのどれにも使わなかった。開設にかかる費用も無料では済まないだろうに、何のために作ったのだろうか。

 厚労省は警備上の都合を理由に、今回の会合を取材する記者を、厚労省にある記者クラブに所属するメディアなどに限定したとしている。つまり多くの海外メディアや専門誌紙を排除したのだ。だとすると余計に、ホームページなどを通じた多言語による情報発信は欠かせなかったのではないか。結果として、検索サイトで「Health Ministers Meeting」をキーワードにニュースを検索してみると、今回の神戸会合の結果は少なくとも13日昼時点では海外の英文メディアにほとんど無視されている。

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 そうした厚労省の「やる気」のなさは、会合の会場になったホテルから目と鼻の先である神戸国際展示場で8〜12日に開催した「ひょうごKOBE医療健康フェア」にも表れた。G7保健相会合に合わせて民間や地元が多様な取り組みを紹介する中、厚生労働省の展示はパネル6枚のみで説明係もおらず、パンフレットもない。多くの人は展示にも気づかず素通りしていた。特に隣が有馬温泉の足湯だったこともあり、厚労省の展示は静けさが際立っていた。

 

 海外から記者を呼べなかったということは、神戸会合の成果や神戸の魅力が地元の努力もむなしく海外に届かなかった可能性が高いことを示す。阪神淡路大震災から復興したことへの感謝の気持ちも残念なことに、しっかりと伝わらなかったのではないか。

 保健相会合はロシアの提案で開催したG8を含めても3回目で、国内では初めてと経験の浅い会合であることには違いない。4月の伊勢志摩サミットで「神戸会合に向けた提案」をまとめてから、半年も経たない短期間で大幅に議論が深まるほど単純な課題でないことも理解できる。だが、特に感染症対策など国境を超えた急務がある。塩崎恭久厚労相は会合終了後、記者団に各国との連携の重要性を認識したと述べたようだが、この発言自体、海外連携に対する厚労省の意識がいかに低かったかを物語る。

 古くからの港町である神戸市や神戸を抱える兵庫県は、海外への意識が特に高い可能性はある。だが国際会合を開く意義を考えたとき、今回の厚労省の対応は、やはり物足りないといえる。それ以前に、少なくとも成果文書ぐらいは記者会見から間を置かずにホームページに掲載してはどうか。海外への発信どころか、国内の専門家による議論のきっかけにもならない。政策の実施主体としての説明責任にも関わる。(神戸経済ニュース)

 

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