神戸経済ニュース

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(解説)動き出す三宮再開発(1)遅れていた街のリニューアル

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 阪急阪神ホールディングス傘下の阪急電鉄は25日、神戸三宮駅の駅ビルである神戸阪急ビル東館の建て替え計画を発表した(図=阪急電鉄の発表資料より)。1995年の阪神淡路大震災で損壊したのを機に取り壊し、仮設ビルのそっけない表情を見せていた「神戸の顔」が地上120メートルに立ち上がる。JR西日本三ノ宮駅ビルの建て替えを計画。神戸市も昨年9月、三宮地区が公共交通の要衝であることを主眼に置いた再開発計画を発表した。震災から21年、ようやく三宮再開発に具体的な動きが出てきた。

 

震災後ほぼ手付かず、再開発ブーム乗れず

 1995年に発生した阪神淡路大震災震源こそ淡路市(当時の北淡町)とされるが、神戸市は海沿いの須磨区から東灘区までがそろって震度7を記録した。特に中小零細の工場や住宅が入り組んだ長田区では大規模な火災が発生し、都市計画にゼロから取り組む必要があった。神戸市は比較的大きな企業や商店を中心に自力復興が進んだ三宮地区の都市計画を後回しにせざるを得なかった。このため戦後復興期に組み立てられ、老朽化したり役割が変化したりしていた都市機能のリニューアルも多くは手付かずになっていた。

 一方で、この20年間に全国の都市部では多くの再開発事業が完成した。たとえば国内でも有数の大規模な再開発事業が相次いだ東京・六本木。六本木ヒルズ(東京都港区)が2003年に開業、07年には防衛庁跡地東京ミッドタウン(同)が街開きした。オフィスと高級ホテル、商業施設に高級マンションをそろえる再開発は、住宅が都心回帰する流れを作った。震災復興を優先させた神戸市は、こうした流れに必ずしも乗れなかった。

 

底堅いブランド力、神戸市長「規模追わず」

 ただ、神戸市でも中央区にはタワーマンションが増え、都心地域の人口は増加。15年の国勢調査で、神戸市は人口100万人を超す大都市で唯一人口が減少したが、中央区、灘区、東灘区と西区の人口は増加した。相対的に交通が不便な北区や戦後造成されたニュータウンが多い須磨区垂水区などで人口は減少したが、「快適に暮らせる神戸」というブランド力の底堅さを読み取ってもよいだろう。三宮再開発は、そうした都市の魅力に寄与するかが焦点だ。

 現在の三宮交差点に自動車を乗り入れさせず、鉄道などの利用者が周辺に集中するターミナル間を移動しやすくするという現在の神戸市の計画は「街に出やすくする」という観点で評価できそう。神戸市の久元喜造市長は「もはや都市の規模だけを追い求める時代ではなく、都市のブランド力、グレードをいかに高めていくのかということを考えないと」(2月26日の定例記者会見)と強調する。三宮に近い場所に住むことの快適さ、を意識した三宮再開発に期待がかかる。

 

日銀のマイナス金利政策で再開発加速も

 さらに金融環境が三宮再開発の追い風になりそうだ。日銀は1月29日に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定。市場金利は大幅に低下し、神戸市が市場から資金調達する際の金利も大幅に低下した。震災後に大きく悪化した神戸市の財政も健全化が進み、15年は格付投資情報センターが神戸市債を格上げした。久元市長は三宮再開発などに神戸市債を「活用する場面も出てくる」(昨年7月の投資家向け説明会)との方針も示している。

 阪急阪神ホールディングスでは大阪・梅田でも阪神百貨店が入居していた大阪神ビル(大阪市北区)と新阪急ビル(同)を一体的に建て替える再開発を進めている。新百貨店の開業は21年秋と、神戸阪急ビル東館の建設期間にも重なる。こうした大規模プロジェクトを複数同時に進めることができるのも、資金調達金利が過去に例がないぐらい低下しているためとみられる。(写真は解体が進んだ大阪神ビルの跡地=武田裕充氏提供)

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 神戸市の中心部にどの程度の再開発の余地があるかは未知数だ。ただ過去20年間に再開発事業が限られたことを考慮すると、長引く低金利によって今後神戸で再開発事業が乱発される可能性が出てきたともいえる。子供服メーカーのファミリア(神戸市中央区)が1900年に建てられた歴史的な建築物「旧三菱銀行神戸支店」を手放したことに、不動産市況の過熱感がちらつく。むしろ神戸市は今後の都市計画で、この手のミニバブルに警戒する必要も出てくるかもしれない。(神戸経済ニュース)=(2)に続く

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