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神戸経済ニュース

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(解説)「よく分からないが何かおかしい」 大阪ダブル選が映す地方行政への気分

 22日に投開票した大阪府知事大阪市長のダブル選挙は、知事選が松井一郎知事(51)が再選、市長選が吉村洋文氏(40)が初当選をそれぞれ決めた。いずれも橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」の公認候補。5月の住民投票で否決されたはずの「大阪都構想」を再び掲げ、大差で勝利した。

 橋下徹氏の政界登場以前から存在した、いわゆる既成政党は全部まとまっても大阪維新に及ばなかった。背景には、住民税の使途に対する住民のそこはかとない不信感があるのではないか。大阪にとどまらず全国に広がる地方自治への「気分」を、より顕著に反映した可能性がある。

 

提示されなかった二重行政の解消策

  5月の住民投票大阪都構想が否決されても、二重行政を解決する道筋が描かれたということではない−−。神戸市の久元喜造市長は今月10日の定例記者会見で、大阪ダブル選挙についてこう分析した。大阪府大阪市が同じ目的で似たような事業をバラバラに手がけるという二重行政は「最終的には何らかの形で解消がなされることが望ましい」(久元氏)という総論に異論はないだろう。二重行政は税金のムダづかいだからだ。

 1人あたりの国民総所得が伸び悩む中で消費税率も引き上げられ、市民の重税感は増している。おおむね一律10%が課税される住民税の使い道にも関心は高まる一方だ。だから、組織の論理を言い訳に、二重行政など税金が有効に使われない事態を解消したいと思うのは自然だ。大阪府大阪市のように行政の課題に共通点が多い自治体だとなおさらだろう。

 「二重行政は話し合いで解決できる」として大阪都構想に反対した陣営が主導して設置した大阪戦略調整会議は空転が続く。そうしたタイミングで中国を中心としたアジア経済が減速。余波もあって日本の実質国内総生産は7〜9月期まで2期連続でマイナス成長だ。納税者にも余裕がなくなってきた。再び都構想に視線が向かうのは案外不自然なことではないといえそうだ。

 

フルートコンクールは真の論点なのか

 神戸市も他人事ではない。市民福祉の向上への関連が薄いことなどを理由に、神戸市が補助金投入の打ち切りを決めた神戸国際フルートコンクール。神戸市長の久元氏は公費の支出について「優先順位をつけていかなければいけない」と説明し、公費投入の打ち切りに理解を求めた。大口の寄付者が現れてコンクールの存続が決まった現時点では総じて、市民の間で好意的な受け止め方が多いようだ。その背景には、大阪都構想の議論が再燃したのと同じ税金の使い道への疑問があるといえそうだ。

 特に神戸国際フルートコンクールが始まったのは1985年だ。地方博ブームに火を着けたとされる1981年の神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア’81)を機に神戸への関心が高まっていた。造成した土地の売却などで住宅地などの開発が進み、人口も増加傾向。不動産価格の値上がりが目立ち始めていたとみられ、税収にも明るい見通しが持てただろう。当時と現在とでは財政環境に大きな違いがあるとあって、納税者の意識にも大きな隔たりが出て当然だ。

  とはいえ、フルートコンクールへの公費投入は4年に1度で5000万円。年平均にしても1250万円にとどまる。シニアな職員1人分の年収といえば大金だが、神戸市議の自民党系会派による政務活動費の不正流用によって捻出された「裏金」は発覚した分だけで1000万円を超える。兵庫県議会では複数の県議によって不適切な支出があった疑いだが、正確な金額や使途など真相は依然として闇の中だ。フルートコンクール以外にも慣例と称して優先度の低い多額の支出がありそう、との疑念はなかなか晴れない。

 

絶対的に足りない地元の情報
 さらに状況が悪いことに、 住民税の納付先である地元の情報ほど報道されにくいという現実がある。政府の予算については新聞やテレビ報道を通じて、ある程度知ることはできる。予算の総額、負債の総額や新たに発生する負債、予算に占める公債費の割合や、一般予算とは別にどういった特別会計があるのか、といった国の問題は大きく報道されることが多い。半面、自治体も似たような経緯で納付した税金の使い道を決めているはずなのに、誰がどのように議論したのかに関しては市民の手元にまで届く情報が絶対的に少ない。

 政党や地元議員による市民への情報提供はあるにせよ、どこか市民生活や多くの人の興味とは離れた問題点が強調されている印象があるのも事実だ。現職議員は選挙が近づくと実績を強調するが、「何かがおかしい」しかし「よく分からない」という地方行政を巡る気分が広がっている。それを投影したのが大阪での都構想や、神戸でのフルートコンクールを巡る議論に投影されたといえそうだ。

 よりよく働き、よりよく暮らすために地元の情報は欠かせない。幸いホームページ経由の情報開示が活発になったことで、以前に比べると地方自治体による行政情報は格段に入手しやすくなった。だが行政情報は多岐にわたり、なお取得しにくい情報も多い。こうした情報を整理できれば納税者自身にとっての課題として、地元の課題を見える化できるだろう。今回の大阪ダブル選挙の結果は、そうした視点で地元に目を向けたメディアの必要性も改めて感じさせた。(神戸経済ニュース)

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