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神戸経済ニュース

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(解説)神戸市は「競争相手」を見定めた都市間競争に参戦を

 阪神・淡路大震災から17日で20年を迎え、神戸市は2015年中にも中長期的な街づくりの方針を打ち出すという。ここでキーワードになっているのが「都市間競争」だ。久元喜造市長は繰り返し、企業誘致や観光客誘致での都市間競争の激化を強調する。ただ、中長期的な視点に立った場合の都市間競争では、「競争相手」を見誤らないことが重要になるだろう。本当の競争相手になる都市とはどこか。特に神戸の街の成り立ちや歴史的経緯に、そのヒントがありそうだ。

 平安時代には既に古都だった奈良や、日本文化の総合的な発信拠点である京都、金融派生商品デリバティブ)取引の発祥の地で日本第2の商都である大阪などと、神戸との間には決定的な違いがある。神戸には江戸時代以前に、現在の都市へとつながる歴史があまりないことだ。1868年の開港以来、神戸は日本にとっての海外への窓口として急速に発展した。1941年に制作された川西英の版画「古道具屋」が物語るのは、神戸に外国人が多く駐在したことから、神戸に住む日本人が自然な形で海外文化を取り入れて豊かに暮らす素地があったということだ。

 貿易立国として成長した日本の輸出入がここ数年、輸入超過(貿易赤字)に転じている。東日本大震災以降に国内の原子力発電所をすべて停止させたことで、液化天然プロパンガス(LNG)などの輸入が増加したためだ。だが神戸港では、いまなお輸出超過(貿易黒字)が続く。神戸港はエネルギー輸入の経路として利用されない中で、逆に輸出が伸びている。品目別では光学機器の輸出増が目立っており、シャープ(大阪市阿倍野区)が中国の小米向けにスマートフォンに使う小型液晶パネルを出荷し始めたのが寄与し ていると考えられる。

  世界の主要港としての地位こそ失ったが、神戸の輸出入が日本全体の傾向と異なるのは、神戸が現在でも「海外への窓口」として機能していることを示しているのではないか。つまり観光資源にとどまらない、生活のすみずみにも行き渡った海外への近さこそが神戸の魅力につながっているともいえる。国内でも洋食や洋菓子の業界をリードする企業が神戸に多く、スイスのネスレや米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が日本での拠点を神戸に構えているのと無関係ではないだろう。

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 だとすると、都市間競争の競争相手は京都や奈良、大阪などではないはずだ。「京都で学び、大阪で稼ぎ、神戸に住む」のが関西人の理想ともいわれた。そうした昔ながら都市間の役割分担にも目配せは必要だし、たとえば京都には精密機器、大阪にはお笑いなどのコンテンツといった、神戸にはない産業の集積もある。京都や大阪の海外への窓口になることで、神戸は共存共栄の関係を構築できるというわけだ。一方で、神戸に集積が進んでいる医療産業を、どのようにグローバル化するかというのも課題になりそうだ。

 2016年の主要国首脳会議(サミット)を神戸で開催できれば、海外への窓口としての神戸を、文字通り世界に改めて訴える良い機会になるだろう。海外の首脳を乗せた航空機が神戸空港に着陸できれば、なお一層「神戸は世界につながっている」という印象を打ち出すことができそうだ。神戸にとって競争相手とは、姉妹都市提携を結んでいる米国のシアトルや中国の天津、韓国の仁川広域市などである可能性も高い。訪れた各国の首脳は神戸の街を散策し、ここに住みたいと思うだろうか。いつまでも豊かに暮らせる街を思い描くには、そうした視点も必要になるだろう。

 (写真は神戸市役所に掲げられたサミット誘致の横断幕)

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